朱夏、後半戦。

一気に読み干しました。

 

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「風待ちのひと」伊吹有喜

 

心の風邪」をひいた都会のエリート銀行員・晢司は、亡くなった母の住んでいた小さな海辺の町を訪れる。そこで知り合った女性・喜美子に母の家と遺品の整理の手伝いを頼むことになる。明るく素直な喜美子だが、彼女も息子と夫を亡くし心に傷を負っていた。スマートで知的だが家庭と仕事に疲れ果てた晢司と、希望も自信も失ったまま田舎で懸命に生きる喜美子。正反対だけれど傷ついた二人は、一夏をすごすうちに、友情が芽生え、愛情が生まれる。お互いの存在と、美しい町と町の暖かい人々のおかげで、二人は止まっていた人生をゆっくりと動かし始める。

 

 

この本は大人のファンタジーだなと思った。

まず海辺の町の景色が美しい。

そして晢司の母と晢司が愛したクラシック音楽が、喜美子と喜美子の亡くなった息子を繋いで、とても美しく物語のキーになっている。

晢司と喜美子も、人生に疲れながらも、お互いに惹かれ合う様子はなんだか子供のように純粋で素直に描かれてる。

景色・音楽・子供のような二人。流れる空気が穏やかで美しい。

喜美子に出会ってどんどん心身の健康を取り戻して、本来の知的でスマートな姿に戻っていく晢司。割烹着を着てあけすけな図々しいおばちゃんそのものだったのが、晢司に出会い、控えめな優しさや美しく着物を着こなす女性らしさを取り戻した喜美子。

二人の変化がもうファンタジーですよ。

けれど、町の人たちの地に足のついた生き方や温かさ、現実的な都会の女・哲司の妻の登場がピリッと場をしめていて、リアリテイがあってとっても良かった。

 

それにしても、息子がいる私としては、喜美子の息子への思いが痛くて痛くて。

耐えられないだろう。想像するだけで吐きそう。そこはもう考えるのをやめました。

 

晢司と喜美子は共に39歳。

私は36歳。自分と3つしか違わない女性の話とは思えないのだけど、やはり苦労が老けさせたのか。

文中に出てきた「人間には4つの季節がある。

十代が青春。20代・30代は朱夏。40代・50代が白秋。それから先は玄冬。」

私自身も朱夏真っ只中、そろそろ白秋にさしかかるわけです。

子育てに追われていているうちに年を重ねてしまったけど、そうか、もうそんな年代なんですね。若いままで止まってちゃいかん。立派に体は老けていっています。

 

39歳の恋。

家庭がうまくいかない男と、家族を失った女の39歳の恋。

魂レベルの出会いってあるんでしょうね。

 

いい本だったな、読んで良かった。